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初めてその、西の大陸の端の国に踏み入った時。
少年をその国に連れていった養父母の、先導する後ろ姿を観て、少年は唐突に――自身が異端者であることだけを悟っていた。
――何処に行っても、誰も……オレのことは知らないと思う。
もしも知っている者がいるとすれば、それは唯一……その時から現れ出した「銀色」に他ならなかった。
「……戦うために、出てきたんだと思ってたけど……」
千族という化け物が、他地域より多く存在する国柄のためか、ディアルスの周囲は魔物が多い。何度となく、養父母と共に、戦闘に参加する機会が増えたこともあった。
「ひょっとして……銀は、知って……?」
強い吐き気に襲われた。昨夜に見たある夢を僅かに思い出した。そこからずっと襲い来る吐き気に、思わず少年は口元を押さえていた。
今この、金色の髪の少年が、どれだけ弱小であるか。
戦う道を選べない己。少年が受け入れ、諦めた心を、「銀色」は決して――見過ごすことも許すことも、できない苛烈さの持ち主だった。
――何で……殺さないの?
金色の髪の少年では勝てない時も、少年の命を削り、大きく体力を消耗して、「銀色」なら抗うことができる。
例えば養父母が見逃した敵でも、「銀色」にとって許せない相手なら、養父母に抗っても「銀色」は排除しようとした。
何故ならこの世界には、「銀色」の心を留める鎖が、戦う想い以外存在しないというかのように。
「……そんな、こと――……」
それは、誰かの体を乗っ取ってまで、呪われた生を繋ぐ少年にとって――それだけは譲れない一線だった。
「ここまでして、生きてるんだから……」
理由は、ある。いつかきっと、出会う日がくる。
既に存在する想いも含め、少年は強く、ただ声を呑み込んでいた。
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