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「そうだな。生き物なら生き物らしく、しっかり栄養を摂るか。もしくは、霊なら霊、神なら神。その辺はっきりとしてから、身の振り方を決めるしかないな」 「ああ。ユーオン小食過ぎるだろ、そう言えば」  回答の謎部分を気にせず横を向く師に、うぐ、と少年は声を呑む。 「アレ以上は……ほんとに無理」  それでなくても吐き気がひどくなっていた少年は、食事が本当に苦手だった。元々エネルギー補給目的のみとしか考えていない。倒れない程度に不定期に何かを口にするだけで、他の者と一緒に食事を摂ることもなかった。 「とりあえず食え。しんどい時は休め。以上だ」  そしてやはり、薬の一つも出ることはなかった。  何かあったら来いと言う医者に、師は笑って礼を言っていた。 「なぁ……アイツ、本当に医者なのか?」  ジパングらしからぬ内装の外来室が、京都の何処の一角かも全くわからない診療所。そこから出た後で、少年は不思議な思いで尋ねる。 「そもそも――さっきの場所、どこ?」 「さぁな? 何処からでも行ける私空間、俺は動かないからオマエらが訪ねてきやがれな超次元とか何とか、かなり前に言ってたけどな」  剣の師曰く。あくまで医者というのは、あの黒い男にとっては暇潰しであるという。いつでも来いと言うわりには、留守にしていることも多い無責任な相手らしかった。 「アラスの知り合いっちゃ、そんな奴ばっかりだな」 「……ソイツ、ジュン達も何度も口にしてるけど、誰なんだ?」  兄弟子達には、知り合いの吸血鬼。剣の師や公家にとっては、旧い仲間ということは少年も把握していた。  しかし当人の姿は全く見たことが無く、そっくりらしい人形の護衛は女性型であり、今一つイメージがわかないのだった。 「頼也と同じ、『守護者』の一人だけどな。アイツもそういや、ユーオンと同じで、最近は全然年とらねーなぁ」 「『守護者』……?」  さも日常会話かのように、師は重大な単語を口にする。 「ゲンジの刀の、何か凄い宝石と……同じ物を持ってるのか?」  師の持つ刀の尋常でなさに、少年はとっくに気が付いていた。公家からそれは、公家が師の力を借りて守る「宝珠」という名だとだけ教えられていた。
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