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孤独という感情を思う時、彼の左肩は特に激しく痛む。
フードの陰で顔を強くしかめた彼に、黒の守護者は思い出したように目を丸くした。
「あ、そっか。兄ちゃんにも双子の妹の呪いがずっと一緒だっけ」
「呪いって言うな。ますます機嫌が悪くなる」
呼吸が止まるほど古傷が痛い。本気の発作が久しぶりに来るかと思ったが、それは別に妹の責任ではなく、その妹を成仏させようとしない彼自身の咎だと言える。
もう話すこともできない死んだ妹。それでも確かに魂はここに在る。黒の守護者の現職は死者を冥府に送る「死神」で、こうした骸の魂は見逃せない反則のはずだ。それでもこの守護者はとにかく甘いので、彼から妹の魂を無理やり引きはがそうとはしないでいてくれた。
八年ほど前、彼が独りで隠居しようとした頃には毎日大きな発作が起こる酷さだったが、それはつまり、彼が孤独だと妹の魂は嫌らしい。その後大切だと思えるヨメに出会ってからは、発作の強さは人前でも耐えられるくらいに落ち着いている。
でも、と不意に守護者の顔が曇った。あまり人に見せることのない、困ったような儚い微笑みを浮かべている。
「この世界にいないヒトを探すのは、お互いどうかと思うんだけどさ?」
うるせー。と返すしかない彼に、店を出て別れるまで、守護者は心配の顔をしていたのだった。
妹もヨメも、どちらも本当は、とっくに失われている。その現実は、彼もわかっている。
「でも……会っちまったから仕方ないだろ……」
既に陽は落ち、暗くなってしまっていた。
並木道で遠く脳裏をよぎるのは、二つの黒い姿だった。
悪魔に魅入られた黒装束の妹。その妹を解放しようとしてくれた、無常な混沌の黒い狼――
「オレがいつまでも『妹』に拘ってなきゃ……あいつだけでも、助けられたのかな……?」
考えても仕方のないことではある。妹を見捨てる選択肢はそもそも存在しない。
そんな彼に似た少年に、この後まもなく彼は出会うことになる。「刃の妖精」を探す傍ら、久しぶりに古い仲間の元を訪れたその時に。
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