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長年の悪魔から、解放されたと語る姫君。
新たな護衛が見つかれば、今度は己の意志で主を探すのか。中庭で、最後にそう尋ねた少年に、姫君は意外な答を返していた。
「わたくしはもう、主を探そうとは思っていません」
最早姫君の知る主が、見つかることはない。二百年という時を思ってか、冷静にそう考えたようだった。
「今のわたくしに何ができるか。それをここで考えたいのです」
少年はずっと、言葉にできない違和感をひたすら抱える。
「アナタの助けが得られたのなら、本当に良かったのですが」
姫君は決して、嘘はついていない。
それなのに何故、その言葉をどれ一つも、真に受け止められないのだろう。
――あいつだけは――絶対に殺す。
姫君の無難で、平和な結論に比べて、その赤く昏い夢があまりに鮮烈であったせいなのだろうか。
「……銀には……わかってるのかな」
寝不足なのに寝付けない頭で、ぼけっと天井を眺める。
そうしてそれだけ、拙く呟いていた。
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