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包は三斉流先生の手を引き、ローテーブルの前に座らせた。
「まずは食事しないかい?僕、自炊で鍛えてたから料理が得意なんだ」
いそいそとキッチンへと戻り、たぶん豚らしい丸焼きやら不気味な魚の煮付けなど、あまり普通の家庭の食卓ではお目にかかれない料理を並べていく。
「タケに食べてもらいたくて、朝から仕留めてきたんだ。野生の猪はパワーが桁違いだったけど、Qさんがアイアンクローで……」
「猪 VS 蛸の戦いなんて、めったに見れるものではない。映像を撮ってなかったのか?」
「タケならそう言うと思った。Qさんの過去の戦いの映像全てをDVD化してきたよ」
『ふふふ♪』と楽し気に笑いながら、包は取り皿に料理を取り分けていく。
「僕の夢だったんだ。タケに僕の料理を食べてもらうのが…いつかまた会えるって信じてたから」
「私はクッキーにご馳走してもらえるとは思っていなかった。だから、夢のようだ」
包は『ありがとう♪』と頬を赤らめる。
「まるでパーティのようだ」
目を輝かせる三斉流先生の前で、ワイングラスにお酒が注がれていく。
「これは?」
「ハブ酒。それも以前に仕事であっちへ行った時にQさんが捕まえたんだ」
ドンッ!とモザイク処理されたハブの入った瓶を三斉流先生に見せる。
「乾杯しよう」
「ああ、私達の“最初の晩餐”に」
「最…初?」
「ここから始まるのだろ?私達は……」
包は目を丸くする。
「ここから始めても…いいのか?」
「私は……始めたいと思っている。クッキーさえ嫌ではなければ」
「嫌なら、今日は漢褌で来たりしない」
その頃―――
「*ε∵о:@+……」
声にならない声でむせび泣くQさんを、部下がぎょっとしたように距離をとった。
「い…いかがしました?」
一人が心配そうに声を掛ける。
「∝∂⊥≫≒A」
「そうですか、良かったですね」
部下の一人がそう言うと、クルリと後ろを向いた。
「おまえ、わかるのか?」
「包以外に解読不可能だ。だが、どうせ盗聴でもして、美味しい話でも聞いたんだろ」
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