~*据え膳食わぬは男の恥 *~

6/9
前へ
/10ページ
次へ
「タケ、ボン・ジョヴィって知ってるかい?」 「知らん。洋酒の名前か?」 「洋酒ぅ?ふふふ♪違うよ、外国のロックバンドだ」 食事が終わり、後ろを向かせている三斉流先生の背中に包は笑いかけた。 「もういいよ」 三斉流先生が振り返ると、あれほどあった食器や猪の骨がなくなっている。 「片付いて…いる…」 「Qさん直属の影の部隊が片付けてくれた。各国の国家レベルの要塞に簡単に忍び込める腕があるんだ」 「そんな部隊を片付けだけに……」 改めて、Qさんが底知れない。 「さっきの続きだけど、ボン・ジョヴィには『It's My Life』って歌があるんだ。『これが俺の人生なんだ』ってそんな意味かな。転校してからこの歌を初めて聞いた」 包は話をしながら割烹着を脱ぎ、丁寧にたたみ横へ置いた。 先日査察で来校した時はスーツ姿だったが、今日は蛸プリントのTシャツにジーンズと言う軽やかなスタイルで、とても新鮮だ。 「タケと離れてみて、初めて自分の気持ちに気づいた……だから、僕は僕で自分を磨くことにした。体重だって半分にした。次に会えた時は、自分の気持ちを伝えたい一心でね」 Tシャツを脱ぎきちんとたたむと、割烹着の上にのせ胸を隠しながら振り返った。 「『Better stand tall when they're calling you out Don't bend, don't break, baby, don't back down』」 「英語の歌は意味が…わからんのだが」 「わからなくてもいいんだ。 『And it's now or never 'Cause I ain't gonna live forever I just want to live while I'm alive It's my life』…それでも会えないかもと思ってたタケに会えた。それが僕の人生なんだなって……後悔したくない」 カチャカチャとベルトを外し、包は三斉流先生の太股を跨ぐように座った。
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!

27人が本棚に入れています
本棚に追加