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「タケ、ボン・ジョヴィって知ってるかい?」
「知らん。洋酒の名前か?」
「洋酒ぅ?ふふふ♪違うよ、外国のロックバンドだ」
食事が終わり、後ろを向かせている三斉流先生の背中に包は笑いかけた。
「もういいよ」
三斉流先生が振り返ると、あれほどあった食器や猪の骨がなくなっている。
「片付いて…いる…」
「Qさん直属の影の部隊が片付けてくれた。各国の国家レベルの要塞に簡単に忍び込める腕があるんだ」
「そんな部隊を片付けだけに……」
改めて、Qさんが底知れない。
「さっきの続きだけど、ボン・ジョヴィには『It's My Life』って歌があるんだ。『これが俺の人生なんだ』ってそんな意味かな。転校してからこの歌を初めて聞いた」
包は話をしながら割烹着を脱ぎ、丁寧にたたみ横へ置いた。
先日査察で来校した時はスーツ姿だったが、今日は蛸プリントのTシャツにジーンズと言う軽やかなスタイルで、とても新鮮だ。
「タケと離れてみて、初めて自分の気持ちに気づいた……だから、僕は僕で自分を磨くことにした。体重だって半分にした。次に会えた時は、自分の気持ちを伝えたい一心でね」
Tシャツを脱ぎきちんとたたむと、割烹着の上にのせ胸を隠しながら振り返った。
「『Better stand tall when they're calling you out Don't bend, don't break, baby, don't back down』」
「英語の歌は意味が…わからんのだが」
「わからなくてもいいんだ。
『And it's now or never 'Cause I ain't gonna live forever I just want to live while I'm alive It's my life』…それでも会えないかもと思ってたタケに会えた。それが僕の人生なんだなって……後悔したくない」
カチャカチャとベルトを外し、包は三斉流先生の太股を跨ぐように座った。
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