リケジョの掟

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「新しくこの研究室のプロジェクトリーダーとなる林葉深姫(はやしば みき)主任研究員だ。年こそ若いが、東大の大学院卒業後、ハーバード大に留学。この道の権威であるH・ラングストン教授の研究室でも太鼓判を押された才媛だ」 まるで雑誌から抜け出した「好感度メイク」モデルのように微笑んだ彼女が一礼すると、明るいセミロングのカールがスーツの肩からこぼれ落ちた。 「若輩者ですが、私こそ皆様に学びたいと思っています。どうぞよろしくお願い致します」 上司である50代の部長が室内の研究員を順に紹介していく。 「それから一倉方子(いちくら まさこ)上級研究員。ベテランだから女性どうし、気軽に相談するといい。ほら、何だっけ今流行りの…ガールトークってやつ?ハハハ」 研究室に相槌程度の乾いた笑い声が流れた。 新しい風を入れたい、若い人の柔軟な発想で、十年に一人の逸材をヘッドハンティング…。 赴任前から評価が一人歩きしていた話題の人。 この西北医大付属生化学センターに勤め続けて10年。叩き上げの女軍曹、といった風格の方子は度の強い流行遅れの眼鏡の奥から、10歳以上も年下の新しい上司を醒めきった目で眺めていた。
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