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「見やすいように」と実験結果の画像をパソコンで加工し、実験ノートを「レシピ」と呼び、「気が散るから」と実験中は決して他人を寄せ付けず、結果が出た時だけ上司に報告…。
方子の師なら、大目玉を落としそうな彼女の研究姿勢に首を捻ること数年。ついにその日が来た。
「西北医大付属生化学研究所、万能細胞発見」「若き美人研究者快挙。ライバル研究者も驚く」
件の細胞はいくら「レシピ」通りに実験しても方子には、いや深姫以外には作成できない代物だった。
細胞の初期化ではなく死滅に試薬が反応したのでは、という方子のごく初歩的な疑問も一蹴された。
だが世界的に権威のある科学雑誌に大々的に掲載されたのだから、結果的には杞憂だったのだろう。
方子は記者会見の準備をしながら胸ポケットの退職届に手を当て、明日からの悠々自適な世界一周旅行に思いを馳せていた。
~終~
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