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罪悪だろうと、私には彼を笑顔になんて出来ないだろうけど。
「なーんて、ね」
自嘲的に漏れたその言葉は誰の耳にも届くことなく、闇に消える。はずだった。
はずだった、になってしまったのは、いつの間にか近くに居たらしい透に優しく頭を撫でられていたから。
こういう時、この人は絶対に私を1人にはしてくれない。
いつもどこからか気が付いて、そっと側に居てくれる。
「そこに居られたら泣きたくても、泣けないじゃない」
こうやっていつも可愛くない一言で、透に責任転嫁してしまう。
こんな狡い人間を、早く見放して下さい。
じゃないと、私は透に縋ってしまいそうで。
でも、この優しさは透の当たり前なんだろう。
そして私が想ってしまった相手の所為なのだ。
私が彼さえ好きにならなければ、こんな風に透の優しさにつけ込む事も無かったはず。
「アイツじゃなきゃダメなの?」
今まで静かに私の頭を撫で続けてくれていた彼が、呟く様に聞いてきて。
意味が飲み込めないまま、彼が良い、と答えてしまった。
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