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透は優しく、そっか、とだけ答えて撫でる手を止めてしまう。
離れていく温かさ。
その手を惜しく思う私は、やっぱり狡い。
「私、馬鹿だよね。彼に彼女が居て、彼女も彼が好きってきちんと理解してる。
でも、2人が幸せに見えなくて……悲しい笑顔、嫌で…
私、あんな笑顔見たくない!でも、あの子とじゃなきゃ、彼は…
なんで…なんでなのかな?諦めきれないよ…馬鹿だよね…」
優しい手を望んで吐き出してしまった言葉なのか、
それとも溜めてきた言葉が溢れ出したのか、
よく分からないままに、透にぶつけてしまう。
こんなコト聞いたって、透の負担になるだけだって、冷静になれば分かる。
そんな理性が働かない私は、本当に自分勝手だ。
「お前は馬鹿なんかじゃない。俺の方が馬鹿だ」
「優し過ぎるよ、透は。甘やかさないでよ…」
「俺は優しくなんかない。今だって、傷付いたお前につけ込もうとしてる。狡いだけなんだ」
「え…?」
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