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はぁ…まったくもって見ちゃいられねぇ。仕方ねぇな、ったく
必死に拝み倒す奴さんをよそに、俺は採掘マシンの前に立つと、端末を操作し、状態を採集モードから発掘モードに切り替える。
マシンが動き出し、採掘用ドリルが採集モードよりもはやく回転仕出して、地面をやかましい音を立てながら掘っていく。
『お?…おぉぉ??』
その様子を、俺の背後から奴さんが興味心身な感じで覗いてくる。
そしてちょいと間を置くと、マシンの下部にあるトレイゾーンに何か金属なようなものが落ちる音がした。それを確認したところで端末を操作し、トレイの中にあるものを外に放出させる。
そうして軽やかな金属と共に出てきたのが、澄んだ海のように透き通った蒼い鉱石だ。
サイズとしては小さく、指の爪ぐらいしかない大きさだが、2~3個ぐらいは回収出来た。
そいつを手に取り、奴さんにまとめて放り投げた。
『お!おっほっほぉぉぉ!!マジか!?マジでマジか!?い、いいのか!?』
器用に片手で全ての鉱石を受け取ると、感極まってか大声で喜びの声をあげる。
『あぁ…それ以上となるともう無理だが、問題ねぇだろ?』
『全然問題ねぇよぉ!!うへへへへ!堪んねぇなぁ!!これだけありゃ今のレートだと200万は下らねぇぜぇ!』
散々崇めるように手渡したレアメタルを一見したところで、奴さんが物を傷つけないよう胸ポケットにしまいこむ。
『マジでありがとよぉ!!早速でわりぃが、俺はこいつを金に換えてくるぜぇ!!あんたの仕事の邪魔して悪かったな!』
そう言って背を向けると、飛び跳ねるようにして去っていく。
『おっとそういやまだ名乗ってなかったなぁ!俺はメタルビートルってんだ!縁があったらまた会おうぜぇ!!』
が、途中振り返って自分の名を残していく。
そうしてすぐにまた走り出しては、その姿は見えなくなった。
なんというか、台風のように現れてはハリケーンのように去って行きやがった。
…やれやれ、変な事に時間を食っちまったな。さて、こっちも自分の仕事を片付けることにしよう。
再びポーチからいつも吸っているタバコを取り出して、適当なスクラップの上に腰掛ける。
そしてタバコに火をつけて、さっき味わいそこねた一服の一時を感じながら、マシンがデータ採取を完了するのを、俺は待ち続けた。
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