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半場諦めるようにため息をついて、咥えているタバコをケースに戻そうとしたが、不意に横からジッポーライターが現れ、その持ち主がジッポーのキャップカバーを指で弾いた所で点火する。
『ふっへへへへ。案外早くに会えたなぁ大将よぉ』
その持ち主の顔を確認して、俺は一瞬目を丸くした。
さっきの任務で会ったあのキャストだ。
こんなお食事処の中でまで、怪しげなマスクとモスグリーンのトレンチコートという格好をしてやがる。加えてその巨体。余計に目立つ事この上ない。
まぁともあれ、せっかくのご好意、とりあえずあやからせてもらうか。差し出された火種でタバコに火をつける。
俺が紫煙を含んでひと呼吸をすると、ジッポーを懐にしまいこんだ奴さんが、何を思ったか、俺の向かい側の席に座り込んでくる。
『へへへ、構わねぇだろぉ?あぁぁ~!心配しねぇでくれよぉ!あんたの飯をつまんだりはしねぇよぉ!』
いやそういう問題じゃねぇと思うんだが、ったく。一気に騒がしくなっちまったが、さっきのご好意もある。とりあえず拒否する事なく、無言で返事をする。
それに例え逃げるように席を移動したとしてもだ、こいつなら普通に後を追って来そうだしな。やれやれだ。
『んじゃま俺も注文させてもらうぜぇ!!』
そう言って奴さんもテーブルの横にあるビジフォンを操作して、何かしら注文をしたようだ。
しかしこいつがここにいるって事は、概ねワケありの傭兵ってところか?まぁ見たまんま訳ありそうなのは察しがつくが。
『へっへへへ、あんたの言いてぇ事はわかるぜぇ!なんで俺がこのエリアにいるかって、そう思ってんだろぉ?』
……見た目に反して随分と鋭い勘の持ち主のようだな。あの時のダーカーとの戦闘でも思ったんだが、こういうタイプは侮っちゃ確実に手痛いしっぺ返しを食らう相手だ。
『…となると、お前さんも何かしら訳ありと、そう思ってもいいのか?』
『まぁそんなところだ!特に金銭関係に訳ありって感じだからよぉ!とにかく金が必要でしょうがねぇんだよぉ!』
こっちが質問した内容にやたらとハイテンションで声を上げつつ答える。陽気というかなんというか、一応はこの店にもある程度客は入ってるんだが、当の本人はまったくお構いなしって感じだ。
あぁ…周りの視線が刺さる感じがするぜ。
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