『スティールハート』

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『ふぅ~…ヒュ、ヒューマンかよ。まったく信じられねぇぜ!俺の背後を取るなんてよぉ!』 顔全体を覆うガスマスクのせいか、奴さんの表情は掴みきれねぇが、とりあえず驚いているようだ。 レンズ部分もご丁寧にレッドレンズで作られているせいで、その向こう側にあるものが一切読み取れねぇ。 拘束していたせいで所々関節部分に違和感を感じるのか、仕切りに腕をゴキゴキと鳴らしながら回している。 『で、だ!そんな俺の背後を取りやがったあんたに、ちょいとばかり頼みがあるんだけどよぉ!』 『……あ?』 今度は態度を一変させて、姿勢が妙に低くなる。大声はそのままだが、なんというか、コロコロと態度が変わるやつだ。 さっきまでの戦闘の姿勢は本当にどこへ行っちまったんだが。 『あんたさえ良かったらよ!ここから取れるレアメタルをちょいとばかり分けて欲しぃんだよぉ!』 妙な低姿勢で、両手を前にして拝むようにせがんで来やがった。大の男キャストで、なりも奇抜な奴がこんな態度を取るところを見ると、シュールで仕方が無かった。 おまけにこっちの任務にあてがって、タカリに来るとわ。当然、突然の要求に俺はしかめっ面を浮かべる事になる。 はてさて…どうするべきか。 本来なら、別段悩むことなく否定するのが普通なんだが。 『なぁ頼むよぉ!マシンのログを見た感じ、あんたの任務はたぶんここいらの地質データの採取ってとこだろ!?』 奴さんの質問に俺は否定も誤魔化しもせず、無言という形で返事をする。 『ならよぉ!独占がかかっちまう前にちょいとばかり拝借しても問題ないだろぉ!?あんたの雇い主が欲しがってるのは物じゃなくてデータなんだからよぉ!』 その通りだ、俺の雇い主は、物なんかよりもデータを優先している。つまりは、奴さんにちょびっとだけ物を譲っても問題はないってわけだ。これが、俺が奴さんの要求を断る事なく、判断を悩ませる理由だ。 当然採取するレアメタルの量によっては、ぶん殴ってでもお引取り願う事になるが。 『頼むぜぇ!マジ頼むぜぇ!!企業の独占が掛かる前の今がほんとマジぱねぇレートになってんだよぉ!!』 今度はまるで神や仏に拝むように両手を合わせてヘコヘコしだした。どうやらコイツの目当ては、本当に金だけのようだな。
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