はじまり。

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「ほい、ここが理事長室。ついでだし待っといてやろうかァ?」 綾に案内され暫くすると目的地であった理事長室へ到着した。 いかにも学園のトップ、みたいな雰囲気がある部屋で扉の造りもまた豪華。 「…いや、大丈夫だ。道覚えたし」 「あっそ。んじゃ、俺は行くな」 そう言って綾はさっさと廊下を歩いていった。 こういった所はアッサリしてんだな、アイツ。 綾が居なくなれば俺は軽く扉を叩いた。 意外だろうが、礼儀作法とかは美晴さんから徹底的に叩きこまれた。 美晴さん曰く、礼儀作法がなってない人は人としての価値が下がるらしい。 「どうぞ、入りなさい」 ノックの音に答えるように中から声が聞こえれば、ゆっくりと扉を開けた。 「ようこそ、竹中伽倶哉くん。 …まぁ正式に言ったら、月宮伽倶哉くんだね。さ、此方に座って座って」 俺を出迎えてくれたのは30前半であろう比較的若い男で、質の良さげなスーツを身に纏っていた。 「僕は鳳凰学園の理事長、東條影人(トウジョウ エイト)です。君のお父さん…、月宮鳴海さんとは大学の先輩後輩の仲なんだよ」 窓から射し込んでくる斜光が理事長の漆黒ともいえる黒髪を照らしていく。 そこから溢れてくる笑顔は、どこか美晴さんに似ている気がした。 つか、俺の父親の大学からの知り合いかよ。 だからこの学園に通わせたな、多分。 「はい、珈琲で良かったかな?最近僕は珈琲にハマってるんだよね!」 …やっぱ、この感じは美晴さんと似てる。 なんか、憎めないキャラだなこの人。 「…いただきます」 淹れて貰った珈琲をゆっくりと、飲んでいく。 やはり金持ちというだけで、今まで飲んできた珈琲と全然違った。 薫りもコクも、俺が今まで飲んだ事がないもので味も美味い。
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