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突然告げられた言葉に正直俺の脳内はパニックになりかけていた。
軽い冗談で、美晴さんったら何言ってんだよー?とか言いたい。
だけど、美晴さんの瞳は嘘偽りなんて一切なかった。
それが、真実だって物語ってる証拠だと。
そう、俺の脳内に聞かされているのだ。
「…ごめんなさい、伽倶哉くん。
この事はね、ずっと前から…あなたを育てている時から私は知ってたの。
あなたの本当のお父さん…、月宮財閥の現当主である月宮鳴海(ツキミヤ ナルミ)さんと私は連絡を取っていたの。
あなたの生活や、あなたの事を知らせていたのよ…」
美晴さんの寂しげな笑顔が自然と崩れていくのが分かった。
目尻には今にも溢れそうな涙を溜めて俺を見つめてくる。
…あぁ、やっぱり本当なんだな。
美晴さんのこんな顔、見たことねぇし。
隠されていた真実に、どこか悲しくて苦しくて。
だけど、美晴さんの事を嫌いになれない自分が居る。
「…なァ、美晴さん。じゃあ、何でさ…
俺はこの施設で育てられたんだよ?
何で…今言ったんだよ…?」
ゆっくりと、自分の中に蠢いていく感情を落ち着かせるように美晴さんを真っ直ぐに見つめ俺は尋ねた。
美晴さんは俺からの質問にこう告げた。
「月宮財閥は世界的に有名なのは知ってるでしょ?
あなたのお父さんは、一代でそれを成し遂げた。いわば、天才とさえ言える。
でも…、そんな月宮財閥の力をよく思っていない人達がいる。
伽倶哉くんは、いずれ月宮財閥を継ぐ嫡男。その芽を刈り取ろうってする人達がたくさんいたの。
だから…あなたのお父さんは、あなたを守るが故にこの施設にあなたを預けた。
いずれ、あなたを安心して迎え入れるためにね…」
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