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「…俺を守るために、施設に預けたってことかよ」
「そう。私の父とあなたの…お祖父さんは古くからの友人らしくてね。それを知ったお父さんはあなたを私に預けられたの…。
そして、それがね…もう、必要なくなるって…ッ…。
あなたを、これから"後継者"として迎えるのッ…、だからね…」
美晴さんの瞳から、大粒の涙が溢れだしていた。
それを見て思わず自分の顔が情けなく歪んでいくのが理解出来た。
美晴さんとの、生活が終わる。
こんなにも、残酷と思えたのは初めてだった。
「…ッ…、ふざけんなよ…!!
俺は、美晴さんの事…本当の家族みたいに思ってんだ…!!
それが、んな勝手な理由で…終わらせたくねぇよ!!」
未だに会った事がない、血の繋がっている父親にこれ以上ないくらい腹が立つ。
俺を守るためと抜かして施設に預けて、俺を後継者として迎えるとかで美晴さんとの生活を断ち切られんなんて。
「……勝手過ぎんだろうがッ…!」
沸き上がってくる怒りの感情。
冷静になんて考えらんねぇよ、そんなの……出来る筈ねぇよ。
「…伽倶哉くん。私はあなたを本当の息子のように育ててきたわ。だからね…、
たとえ離れていても私たちは家族よ?
大丈夫…。私の自慢の息子なんだから。
あなたなら、どんなに苦しくても乗り越えられる強さがあるんだから」
美晴さんの温かい掌で、俺の手にその温もりが伝わってきて。
美晴さんの温かい笑顔で、俺の心は温かくなっていく。
…何でだろ、昔からこの人の温かさに弱かった。
どんなに苦しくても、この笑顔を見て俺は頑張れたんだ。
「…美晴さん、それでいいのかよ。
もしかしたら、会えなくなっちまうかもしんねぇんだぞ?」
情けない程に俺の声色は、不安を物語っていた。
今、自分の顔がどんなに情けなく映っているかわからねぇ。
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