第1章

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 リグロルはまだ立っているので至近距離の目の前にリグロルの銀色デルタ地帯がある。  なんだかもう恥ずかしいやら何やらの文月は片手を放して自分の脇の湯面をぱちゃぱちゃ叩く。 「リグロルも入ってよ」 「畏まりました。では失礼します」  リグロルは湯の中を歩いて文月の隣に腰掛ける。  ……近い、……近いよリグロルさん。体がぴったりと柔らかいよ。  しっかりお湯につかるまえに既に文月はのぼせそうだ。  百合がどこかで咲きそう予感がした。  アラート。 「はうぅ~……」  うめき声ともため息とも取れそうな息を吐きながら文月はお尻を前へずらし段差を降りる。とぷん、と肩まで湯に浸かった。体を密着させて文月を支えていたリグロルも当然肩まで湯に入る。お湯に入って少し軽くなった体のおかげでリグロルとの接着面が少し減った。 「ほぅ……」  今度こそ文月は安堵の息をついた。  この世界へ呼び出されてから初めてリラックスできたのかもしれない。 「フミツキ様、お湯加減はいかがですか?」 「うん、丁度いい」  文月は目を閉じたまま上を向き、もう一度息をついた。 「はぁ~……」  片手をリグロルに支えられたまま文月は体の力を抜いた。お湯が文月の体をやんわりと持ち上げる。文月の体がふわりと浮かび始めた。  リグロルは文月の髪がお湯に入らないように腕を文月の首の後ろに入れ体を支えた。文月の胸のふくらみが少しだけ湯面から出た。  ぴんく。  目を閉じたまま文月はお湯にたゆたう。壷から溢れるお湯の音だけが浴場を満たした。 「ねぇ、リグロうわぁっ」 「どうなさいました?」  半分夢うつつになりそうだった文月は眠気覚ましにと思い目を開けリグロルに話しかけた。  リグロルが自分の頭の後ろに腕を入れて体を支えてくれていたことは知っていたが、顔の真横にリグロルの胸があることは思いもよらない事だった。目を開けた途端、豊満な胸が視界の大半を覆っていることに驚いて文月はばちゃばちゃとお湯の中で体を起こす。 「あ、ありがとう、気持ちよかった」 「それはようございました、ではそろそろお体をながしましょうか?」 「うん、うん」
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