第1章

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「榎本くーん、成績の結果、見に行かないのぉ?」 うちの学校は、テストの結果を廊下に貼り出す形式になっている。 学年ごとに、総合得点でつく順位。 「僕はいいよ。順位とかあんまり興味ないんだ。大事なのは自分が頑張ったことだから」 それっぽい理由を並べれば、目の前の女子は「かっこいい…」なんて惚けた目で見つめてきた。 (目線、鬱陶しい。 てか、見に行かなくても、俺が一位だって決まってる) そう心では思っているけれど、それを一言も表情に出さない。 これが俺の一番の得意技。世の中を穏やかに渡って行く、便利な道具だ。 そろそろ話を切り上げようか、そう思っていたその時、別の女子から、声をかけられた。 「榎本くん!流石だね!今私成績表見てきたんだけど、 学年二位だったよ!おめでとう!」 (えっ) 「えー!すごーい!」なんていって、もとからしゃべっていた女子もはしゃぎ出す。 けれどそんなことはどうでもよくて、俺はそれに適当に返事し、微笑んでから、用事があるといって席をたった。
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