第1章

16/38
前へ
/233ページ
次へ
「岸本くん、その格好は校則違反だ」 「うっせーよ、ダサ眼鏡。どんな格好しようと勝手だろっ!!」 入江 空に会いたい。その思いは二年になると同時に叶えられた。 同じクラスになったのだ。 「あーあ、あの二人またやってるわよ」 「ほんと、毎日よく飽きずにやるわね」 岸本 龍平との毎朝の攻防は、クラスの人間には、毎日の日課というぐらいにしか認識されなくなっていた。 みんなが興味を失ってる中、俺だけはいつもしっかりと見てる。 正直、最初クラスで入江を見たときはショックだった。 募りすぎた理想は、俺の中で大きな存在となっていたから、七三わけで眼鏡のそのダサい姿は衝撃的。 勉強はともかく、スポーツができるなんて到底信じられない。 でも… 「その赤い髪、いつも黒に染めろといっているだろ? カッターシャツの下に黒いシャツを着ることも校則違反だし、開けていいのは第一ボタンまで。 あとピアス、ブレスレット等のアクセサリー類も認められていない。 いったい何回言えば覚えるんだ」 ピンと伸びた背中に、凛とよく響く声。 一度もはずしたところを見たことがない眼鏡は、入江のストイックさを象徴しているみたいだった。 テストの優劣もスポーツができるできないももうどうでもいい。 誰にでも平等に隔てなく、態度を変えないそのまっすぐさに目を奪われる。 俺は多分、入江のことが好き。
/233ページ

最初のコメントを投稿しよう!

280人が本棚に入れています
本棚に追加