第1章

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「岸本 龍平」 「っ、な、なんだよ…」 「? どうした?顔が赤いぞ?」 「うっせ、なんでもねーよ!何の用だってきいてんだろっ!」 「……さっきの数学の授業、あまり集中できていないようにみえたが? 学生にとって授業は貴重な時間だ。無駄にするな」 「っ!!」 なんて、やりとりが目の前で繰り広げられた、一時間目終了の後の休み時間。 岸本の顔は、その頭とおんなじような色をしている。 目も泳いで落ち着かないようだし、これはきっと…。 「おちおちしても居られないか…」 「え?榎本くん、何か言ったー?」 「ううん。なんでもないよ。ちょっとね」 意識して微笑んで、心のなかで決意を固める。 (行動を起こさなくちゃね。 誰かにとられる前に…) 誰にも気づかれないように、そっと舌をなめた。
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