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「…騒がしくてわりぃ」
ため息と共にそういうと、「いや」っと返事が返ってくる。
「こんなに賑やかな家、初めてだ。少し驚いたけど楽しいな」
なんて言った言葉は穏やかで、それが本心だって思わせた。
「楽しい」そう思ってくれてるなら、嬉しい。
「あ、今日寝るのこの部屋だならな。雑魚寝になるけど…
いいか?」
「ああ、構わない」
「んで、こいつも一緒に雑魚寝」
こいつ、と言ったときにこの部屋で一つしかない勉強机に座っているやつの肩に手をおいた。
「…勉強のじゃま」
なんて可愛くない返事を寄越すのは、2コ下の巧だ。
「俺んち貧乏でさ、部屋は兼用で使わねーと行けねぇし、勉強机も一個しかねーの」
勉強机を巧に貸すから、あんまり勉強できなくてあの成績なんだよなー。なんて言ったら、
「いや、勉強はしようと思えばどこでもできる」って入江の言葉と、
「人のせいにするなよな。竜兄は元からあんまり頭のできよくねーだろ」っていう巧の言葉に攻撃された。
「っ、うっせーなぁ」
なんてふてくされてる横で、入江と巧はなんだか意気投合したようだった。
「入江さん、ここわかんないんだけど」
「ああ、ここは─」
なんて入江が勉強を教え始め、巧もなつき始めた。
(面白くねぇ。
つーか、巧俺には勉強のこと聞かねぇのに、なんで、入江にはあんなに聞くんだよ!)
その答えは一つしか見当たらなくて、悲しくなった。
そして俺は静かに部屋を出たのだった。
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