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「何でそんな簡単に空の視線を奪えるの?何で、そんなに簡単に空を動揺させれるの?
何で……」
そんな簡単に「好き」を伝えれるのさ。
(ずるい。)
「…あぁ、そうか。」
自分が心のなかで吐露した最後の言葉に、イライラの正体が分かった。
「?……最後の『何で…』の続きは?」
今の俺の呟きの意味もあまり理解できていないような岸本の声色。
その戸惑った感じに、なんだな少し可笑しくなった。
「いや、別に。」
少し羨ましくなった。なんて、言えるわけがない。
そんなことをいうと、調子に乗るだろうから。
(そうだ、俺は羨ましくて仕方が無かったんだ、この男が。
俺のできないことを簡単にやってのけてしまう。
俺はただただ、それを見ていることしかしなくて、それでイラついた。)
それは悔しくも、憧れに似た感情だった
自分の出来ないのとを簡単にやってのけてしまう。俺はこんなこんな男になってみたかったんだ。
でも、なれなかった。いやならなかった。当たり前だ、俺とこいつは違う人間なんだから。
単純明快なこの男だからできたこと。だったら俺も、俺にしかできないことがあるはずで。
(俺がこいつの真似をしたって、意味はないんだ。)
俺は俺にしかできない方法で、空を手に入れればいい。
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