第1章

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「岸本くん、その格好は校則違反だ」 「うっせーよ、ダサ眼鏡。どんな格好しようと俺の勝手だろっ!!」 学園ものの漫画に、ぜってぇ一人はいるだろ? 前髪が七対三にわかれてて、絶対目にはかからない長さ、 四角の銀縁眼鏡を通常装備していて、 制服は「着崩し」って言葉を知らねぇのかよってくらいピシッと着る。 モブ中のモブ、イヤミ眼鏡。 主人公たちを引き立たせるためだけにいる存在。 「その赤い髪、いつも黒に染めるようにいってるだろ? カッターシャツの下に黒いシャツを着ることも校則違反だし、開けていいのは第一ボタンまで。 あとピアス、ブレスレット等のアクセサリー類も認められていない。 いったい何回言えば覚えるんだ。」 つらつらと、かつ無表情に指図してくるダサ男。 ほんっとーにむかつく!! 「うっせー!毎日毎日おんなじこと言いやがって! どんなけ言っても、俺は絶対直さねーからなっ!」 このやりとりは、毎朝の日課みたいになってる。こいつと同じクラスになった2年から。 こいつのしつこさだけは天下一品。 毎日、壊れたロボットみたいにおんなじことを繰り返す。 もしかしたらこいつはアホなんじゃないだろうか。 でも実際にアホなんて言ったら、眼鏡をチャキッと動かして、 「誰に向かって言ってるのかな?」 なんてぬかすにきまってる。 (…まあ、そう言いきれるくらいには頭はいいらしいけど) そのモブ面に似合わず、テストはいつも主役級の点数を叩き出す。 学年トップの常連。 頭だけ、だったらまだキャラにあってる。 なのにその姿でスポーツもできるからムカつく。 こいつのモブ要素って、実は外見だけ。 なんでこんなモブオーラたっぷりなのにスペック高ぇんだよっ!納得できねぇ!! だから俺は大嫌いなんだ、目の前にいる通称ダサダサ眼鏡、『入江 空(イリエ ソラ)』のことが。
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