第1章

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モヤモヤとしたものが広がっていく。 (なんで、花岡の方は向くんだよ。 俺がどんなに視線を送っても無視してるくせに) モヤモヤはいつの間にか、イライラにすりかわっていく。 (だいたいなんであんな顔すんの? くすぐられただけで大袈裟なんだよ。 俺の前じゃ、表情なんて崩さねぇくせに…) 俺だけじゃない。他の誰にだって、入江は淡々とした態度をとっている。 間違っていることはためらわずに言うし、人によって態度を変えることもしない。 だからとっつきにくくて、みんなから遠巻きにされてたりするんだ。 でもその遠巻きにみる視線の中には、尊敬の眼差しだって含まれてる。 だからクラスの委員長なんて役割だって推薦で決まった。 俺との毎朝のやりとりは、同じクラスになって、入江が委員長になってから。 毎朝ほんとうるせー。 でも、それは俺をちゃんと見てるってことだと思ってた。 他のクラスの連中より、少しだけ、その距離は近いんだって、 なんかそんなことを考えてた。 でも、 振り向いたその顔は、迷惑そうな顔をして、それすら俺は滅多と見ないものだった。 (花岡だけ、特別なのか…?) そんな風に思ってしまうと、もう入江の方は見れなくて、 机に伏せて寝てしまおうと思ったのに、心のなかが騒がしくて寝れなかった。
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