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「それ、本当に本物?」
「なら、触ってみればいい。」
私は恐る恐る翼を触ってみた。
ドクン……ドクン……
翼は確かに脈打っていて、触った感触も作り物には見えなかった。
「なぜ私に正体をバラしたの?」
私は尋ねた。
「お前なら受け入れてくれそうだから。」
思わぬ返事に私が戸惑っていると、急に黒羽くんが私を抱きしめた。
「えっ!」
「静かに。」
1人訳も分からずドキッとしている私を制して、黒羽くんは周りを見渡す。
すると、路地の向こうから50人くらいの黒スーツの男たちが現れた。
「まずいな……
このまま飛んで逃げるしか無い。」
そう言うなり、黒羽くんは私をお姫様抱っこして力強く飛び上がった。
「キャッ!」
思わず悲鳴を上げてしまう。
「俺にしっかり掴まれよ。」
夢のようなシチュエーション。
大好きな黒羽くんにお姫様抱っこされている私。
けれど、黒羽くんは連続焼死事件と連続吸血事件の犯人、ブラックドラゴン。
しかも、本物のドラゴンらしい。
その証拠に、今私をお姫様抱っこしてドラゴンの翼で羽ばたいて逃げている。
追っ手を振り切ったと確認して、黒羽くんは別の路地裏に降り立った。
私もお姫様抱っこから解放され、ちょっと恥ずかしい気持ちになる。
「お前の家どこ?
送ってやるよ。
親も心配してるだろ。」
黒羽くんの優しい心遣いが逆に胸に刺さる。
なぜなら……
「心配してくれてありがとう。
けど、私の両親はもうこの世にいないの。
だから、家に帰っても誰もいない。
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