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洗い替え用も含め支給された3枚のうちの1枚を広げる。
「あ、これって。」
コートの胸元には、シルバーで小さなティアラの刺繍が施してあった。
「これ…綺麗。」
そっと指で刺繍をなぞる。
「いいだろ、それ。」
「義兄さんが?」
「ピンクは俺の意見なんだけどな。」
『これはあいつ』と和希は苦笑いし、龍司達の輪の中にいる徹平を顎でしゃくった。
「厨房ではコックコートだし、髪も引っ詰めてなきゃなんねぇだろ?なかなかお洒落なんてできないだろうから、せめてもって。」
そんなの。
今までだってそうだったんだから、何一つ気にならないのに。
「なんの刺繍にするかみんなに聞いたら色々意見が出たんだけどな。徹平がティアラがいいってきかなくてな。『姫』と言えばティアラだろうって。」
徹平さんが…。
それを聞いた姫香の胸は、何となくムズムズし、不思議な事に鼓動が乱れた気がした…。
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