第5章

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そのうち徹平の存在を気にしなくなったのか。 緩やかに鼻唄が聞こえてきた。 呑気な女だ。 あまりにも呑気過ぎて…。 「アンタさ、あっという間に吹っ切ったよね。どうやったの?」 思わず聞いてしまった。 まだ触れて欲しくはないであろう姫香の傷に、躊躇いもなく触れてしまったことに激しく後悔する。 けれど徹平も早く吹っ切りたいのだ。 そんな思いが先立って口を開かせてしまったのだろう。 突然の徹平声に一瞬きょとんと目を丸くしたが、 「あ」 と悟ったように声を上げてポンと手を打った。 「徹平さん。私がわかりやすいんじゃなくて、徹平さんのカンが鋭いだけですよ。お姉ちゃん以外は誰も気付いてなかったんですから。」 「…そ?」 注意深く見ていれば誰でもわかると思ったけど。 いや、そもそも注意深く見る必要なんてないわけだけど。
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