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そのうち徹平の存在を気にしなくなったのか。
緩やかに鼻唄が聞こえてきた。
呑気な女だ。
あまりにも呑気過ぎて…。
「アンタさ、あっという間に吹っ切ったよね。どうやったの?」
思わず聞いてしまった。
まだ触れて欲しくはないであろう姫香の傷に、躊躇いもなく触れてしまったことに激しく後悔する。
けれど徹平も早く吹っ切りたいのだ。
そんな思いが先立って口を開かせてしまったのだろう。
突然の徹平声に一瞬きょとんと目を丸くしたが、
「あ」
と悟ったように声を上げてポンと手を打った。
「徹平さん。私がわかりやすいんじゃなくて、徹平さんのカンが鋭いだけですよ。お姉ちゃん以外は誰も気付いてなかったんですから。」
「…そ?」
注意深く見ていれば誰でもわかると思ったけど。
いや、そもそも注意深く見る必要なんてないわけだけど。
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