第5章

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そぉっと覗いてみると。 姫香と徹平が二人で何か話しているようだった。 耳をすませてみるが、二人が何を話しているのかよく聞こえなかったけれど。 姫香が泣いている事だけはわかる。 雰囲気的に徹平が原因ではなさそうだ。 ガラにもなく慰めている…のか? その瞬間。 薄らと涙の跡が残るその顔から生み出された、信じられない様な優しい笑顔を目の当たりにした瞬間。 全身が雷に打たれて震えるような感覚を味わった。 ヒトメボレ? いや、知ってる子なんだから一目惚れではないだろう。 けれど姫香のその表情に。 あの笑顔にヒトメボレしたんだ。 女の子は可愛いか美人か。 縛られないフランクな関係が築ければ何の問題もない。 心を動かされる人に出会って来なかった裕人は、ずっとそう思ってきたのに。 裕人は完全に姫香に落ちてしまった…。
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