第9章

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『好きだ』 『好きです』 ちゅー 『俺のこと考えて』 事の運びはこうなのだけれど。 思いを伝えあって、気持ちが通じあって、そのうえでキスして。 なのに…なに? この今までと何も変わらない空気。 あれって私の都合のいい妄想だったっけ? あれから2日経つけれど、二人の仲は大きな進展をしてはいなかった。 チラリと徹平を盗み見すれば、この世のものとは思えないほど美し過ぎる顔がそこにあって。 あ、やっぱ夢かも知れない。 いや、夢だな、うん。 こんな完璧な人が、私を好きだなんて言うはずないもん。 夢じゃないとは分かっていても、夢だと思う方がしっくりくるこの距離感が、姫香の胸をまた惑わせていた。 斯く言う徹平も。 表情には出ないだけで、内心とにかく焦っていた。 好きって言って、好きって言われて。 二人の気持ちが同じだとお互いが気づいて。 それでどうなるんだ? どうすればいいんだ? 思いが同じなら、もう恋人同士ってことになるのか? それとも『付き合おう』と言葉にしなければならないのか? それならば…俺は大きなミスを犯したんじゃないのか? 初めての経験に、頭はパニック状態だったのだ。
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