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『好きだ』
『好きです』
ちゅー
『俺のこと考えて』
事の運びはこうなのだけれど。
思いを伝えあって、気持ちが通じあって、そのうえでキスして。
なのに…なに?
この今までと何も変わらない空気。
あれって私の都合のいい妄想だったっけ?
あれから2日経つけれど、二人の仲は大きな進展をしてはいなかった。
チラリと徹平を盗み見すれば、この世のものとは思えないほど美し過ぎる顔がそこにあって。
あ、やっぱ夢かも知れない。
いや、夢だな、うん。
こんな完璧な人が、私を好きだなんて言うはずないもん。
夢じゃないとは分かっていても、夢だと思う方がしっくりくるこの距離感が、姫香の胸をまた惑わせていた。
斯く言う徹平も。
表情には出ないだけで、内心とにかく焦っていた。
好きって言って、好きって言われて。
二人の気持ちが同じだとお互いが気づいて。
それでどうなるんだ?
どうすればいいんだ?
思いが同じなら、もう恋人同士ってことになるのか?
それとも『付き合おう』と言葉にしなければならないのか?
それならば…俺は大きなミスを犯したんじゃないのか?
初めての経験に、頭はパニック状態だったのだ。
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