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自分の気持ちが報われなかったことによる喪失感と、やり場のない憤り。
姫香の選んだ男が徹平でなければ。
いっそのこと、どこの誰かも知らない男なら、裕人の気持ちも違ったのかもしれない。
自分の仲間で認めた男だからこそ、気持ちは乱れているだろう。
徹平と姫香が2人で個室に消えてしまってから裕人は急に大人しくなり、さっさと着替えて強引に雅人を引きずりながら帰ってしまった。
龍司と顔を見合わせたが、その日のうちに個室から出てきた2人から何かしらの報告を受けることを避けたかったのだろうということで話はまとまった。
「裕人の事は気になるけど隠すつもりはない。それをした方が裕人に失礼だからね。」
「そうだな。そんなことしちまったら、アイツきっと一生お前と口聞かねぇぞ。」
「それはそれで面倒だな。裕人だけならまだしも、もれなく雅人も付いてくるからね。」
「雅人は裕人より黒いからな。」
「発狂されそうだ。」
苦笑いが漏れたが、和希はハッとして顔を引き締めた。
「『妹さんを僕にください』ってセリフ言うまで俺も許さねぇからなっ。」
「……」
ひょっとして…和希が一番面倒くさいのかもしれない…。
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