5512人が本棚に入れています
本棚に追加
/460ページ
「もどかしいんたよ2人とも。徹平もさっさと話さないと逃げられちゃうよ。」
面倒くさそうな顔をして雅人が横から口を出した。
昨夜の裕人の愚痴に延々と付き合ったのは自分だ。
それはそれは鬱陶しくて仕方がなかったが、裕人が初めて本気で好きになって失恋したのだから、それはそれで仕方がないのだ。
双子は思いも共有する。
そんな話をよく聞くが、正直言ってこの歳にもなればそんな事は全くない。
それでもやはり、自分の片割れが目の前で打ちひしがれていたら堪らない。
飲ませると止まらなくなり翌日の仕事に支障が出ると困るので、眠りにつくまでずっと聞き役に徹していたのだ。
そろそろ裕人のためにも徹平の一言で終わりにさせてやって欲しい。
それが裕人の傷をえぐってしまったとしても。
後2、3日の寝不足くらいは我慢しよう。
そう覚悟した雅人は、後から裕人の肩に腕を回すと、
「散々嫌味言えたことだし徹平の話、そろそろ聞いてあげよう。先延ばしにしたって結果はかわらないから。」
そう言って裕人を諭した。
「短く簡潔に。」
裕人はそっぽを向いて徹平に呟いた。
「わかった。じゃあ一言で。」
戸惑いなく頷く徹平とは反対に、和希は内心ハラハラしていた。
なんてったって徹平だ。
相手を思いやり順序立てて言葉を選びながら話す。
そんな俺でもなかなか出来ないことを徹平ができるはずがない。
案の定。
「姫と結婚するから。」
徹平は裕人にどどーんと爆弾を落とした。
最初のコメントを投稿しよう!