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どうやって姫香を泣かせようか。
いや、啼かせようか。
そんな腹黒い思いを得意のポーカーフェイスで取り繕いながら、徹平は内心舌舐りをした。
「姫ちゃんも優ちゃんも幸せね。こんな素敵な旦那様に出逢えて。お母さんも幸せだわぁ。こんなイケメンな息子が2人もできるなんて。これで目の保養は一生確保されたんだから、老後は目にだけは気をつけて生きてかなくちゃ勿体ないわね。」
にこにこと微笑んではしゃぐ姫香の母親を見ていると少々毒気も抜かれそうだが、そんな事くらいで甘い顔はしてやらない。
とてもこの場では出せないようなお仕置きを脳裏に巡らせながら。
あー、早く役所に提出して部屋に帰りたい…。
徹平は心底そう思った。
「いつも和希と徹平くんが一緒に居るのが当たり前になってるけど、これからは一生一緒なのね。」
「2人は義兄弟になるんだぁ。」
優姫と姫香からしみじみ呟かれ、徹平と和希は自然と向き合う。
昔からずっと一緒にいた仲間。
コイツとなら自分の夢を一緒に叶えられると思いあった仲間。
その相手と兄弟になるなんて、数ヶ月前までは思いもしなかった。
俺が『弟』ってのが何だが…。
それでも姫香と歩む将来には、『幸福』の文字しか見えないから。
多少の事はよしとしよう。
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