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「ここって…」
連れてこられた先は、姫香が働いていたホテル。
もう二度と来ることはないと、レストランスタッフ全員に華麗なタンカを切って捨てた場所。
そこの前に今、徹平と二人で立っている。
「徹平さん、どうしてこんなとこ…」
後暗いところなど何一つあるわけでもないが、それでもやはりこの場に来るのは躊躇われる。
戸惑がちに見上げた姫香の表情とは打って変わって、徹平は綺麗な笑を浮かべていた。
「だって姫、実感なかったでしょ?俺もそうなるってわかってたから、最初から予約とってた。」
「や…だからどうしてここ?」
質問の答えになっていない徹平と言葉に不安を感じながら問うと、
「ここが一番実感をくれる場所だと思ったからだよ。」
そう言って微笑む徹平は、見たこともないほどイキイキとしていた…。
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