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「…2名様だと…お伺いしておりましたが…」
明らかに挙動不審なホールスタッフの女は、首筋に冷や汗を垂らしながら確認してきた。
ゆっくり後ろを振り向くと、俺の背中にピッタリと張り付いて自分の存在を消しにかかっている姫の後頭部が見える。
「何してんの?往生際が悪い。」
グイッと姫の腕を引っ張って前に出すと、女性スタッフの顔色が更に真っ青になった。
「水沢…さん…」
小さいけれど高い声は、平日ディナー前の空いた空間にはとてもよく響いてくれた。
「…どうも…」
そう返した姫を遮るかのように、
「今は水沢じゃなくて鈴谷です。」
と少し声を張ると、どれだけの人間が聞き耳を立てていたんだと言いたくなるほどの空気の変化に、徹平の顔の筋肉が抑えきれずに緩む。
ああ…最高。
予約しといてよかったな。
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