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純粋な目をして姫は俺の次の言葉を待っている。
あぁ、とてもじゃないけど本当は2番目こそが俺にとってはコジツケだなんて、絶対に言えないな。
本当は俺自身が優越感に浸りたかっただけだ。
幸紀の絶望感満載の青い顔。
千春の怒りと嫉妬に満ちた女の中でも一番醜い顔。
それを中心に広がっている、興味、妬み、僻み、煽り多種多様な面々。
こんな人間の内面をあからさまに目に出来るとは。
やっぱりこのホテルは面白い。
そしてやっぱり…姫には不似合いだ。
「俺がここで姫に感じて欲しかったのはね、今の自分と昔の自分との比較だよ。」
「比較?」
「そう。今の自分が作れる味とこのホテルの味の比較、って言った方が正しいかもしれないけど。」
「少しは成長できたとは思いますけど…。それに、こんな所だけど一応ここは一流レストランですよ?徹平さんの腕には適わないけど、ここもそれなりの味ではあるわけだし、私はまだまだ…」
「そう思ってるからこその比較だよ。ま、俺達が来ていることは厨房にも伝わってるだろうから力入れてくれると思うよ。コースを頼んだし食べていけばわかるよ。」
それこそ姫の舌なら一口でわかるだろうね。
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