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本日潜入した城の回廊と最上階を、構造を図に起こして作戦を考えるといいい、少年少女達は幼女の家に泊まることとなった。
「……限界かもしれないですね、結局は」
「…………」
台所を占拠し、色々と話し合う年長組を横目に、縁側に座って話す幼女と術師の子供だった。
「ラピさんに関する何かが、覆い隠されているということ自体、兄様や鶫ちゃんも無意識に違和感を持ってるのかもしれません。槶は槶で、あの仔がラピさんだって、何処かで気付いてるのかもしれない」
「……みんな……ホントのことを知りたがってる?」
「知りたいと言うより……誤魔化せないんだと思います」
兄達の姿の、これまでにない熱心さに、術師の子供がため息をつく。
「みんな、ヒトのことが気になるヒトばかりですから……」
うん……と、幼女も同意だった。ゆっくり頷くと同時に、ぽてっと、抱えていたぬいぐるみを突然取り落とした。
「――って、眠たいんですか、猫羽さん」
「あ……ごめん……」
胡乱な目を擦り、ぬいぐるみを拾おうと庭に降りた瞬間――
幼女の周囲が、一瞬の青い光と共に闇に包まれていた。
……あれ、と。暗闇で逆に意識のはっきりした幼女は、ぐるりと辺りを見回す。
「……わたしに……まだ、用があるの?」
「…………」
幼女をこの暗闇に呼び込んだ者。すぐ気付いた幼女は、闇に溶け込む黒い人影に淡々と語りかけた。
「ここは……あなたの夢の中?」
「……そうですね。そう捉えてもらうのが、一番近いでしょうね」
営業口調ながら人影は、凛とした本来の、剣士たる面持ちでそこに在った。
「夢は意識と無意識の狭間にある、忘我の世界ですから。私は元々、そこから奥を覗くのが得意だったんです」
だからこそ、一時期同居した「忘却の神」も、ヒトの夢を覗く力を得た。黒い女も代わりに「忘却の神」の力を流用できるようになった。そうして忘我のカギを得た相手に年中無休で介入できるのだ。
「夢はいつでも――何処でも、そのヒトの傍にありますからね」
それはこの幼女も例外では無いと、伝えるように笑う。
「どうして……わたし達の邪魔をするの?」
幼女はそこで、気になっていたことを口にする。
「邪魔をしても、止まらないって……わかってるよね?」
剣士の少年に剣を向け、一行を足止めした黒い相手。本当はそれで、彼らを止められないとわかっているはずだ。
わざわざ酔狂に彼らに関わる黒い女に、その真意を尋ねる。
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