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「兄様は『ピアス』を連れて、ユーオン君が出てきたら足止めをして下さい。猫羽さんの用事が終わればピアスにそれは伝わるので、ピアスが動き出したら一緒に戻って下さいね」
剣士の少年には灰色の猫のぬいぐるみが渡され、少し不服気にそれを受け取る。
「闘いの途中でも、相手に背を向けるのか?」
「猫羽さん達に何かあった時も、ピアスが兄様に助けを求めるはずですから……動いた時にはとにかく注意してほしいんです」
それは仕方ないか、と、剣士の少年も納得したようだった。
「一番いいのは、蒼がユーオンを屋上に誘い出して、その間に私と椢が最上階に入ることよね」
「そこにまた、あの仔狐がいるならな」
最上階で階段を調べていた剣士の少年は、屋上に繋がる階段があることにも気が付いていた。
「そう上手くいくとは限らないし――素早い仔狐をどうやって捕まえるかだしな」
「でも今度は、あの仔にも気付かれないようにするんだよね?」
元々瑠璃色の髪の娘を忘失の暗幕の対象外にしていた幼女は、改めて頷いた。
「いざとなったら私も力を使うし、こっちのことは心配しないで、蒼はとにかく、気を付けてね」
「わかってる。ユオンはともかく、『銀色』なら本気で殺しに来るしな」
「ホントに危なくなれば、兄さんも気付くようにするよ、ソウ」
そのためぬいぐるみを剣士の少年に渡し、様子を観れるようにした幼女だったが、
「そうなったら今度はユオンが気に病むだろ。俺も情けないし、そんなことはないようにする」
あくまで相手のことを考えて言う剣士。思わず青い目が潤む幼女の頭を、ぽんぽんと撫で叩いて余裕を見せた。
そうした作戦会議の模様を、面白げに遠目で見守る紅い少女と紫苑の男だったが。
「何て言うか……血は争えないお人好しっぷりだな、アイツら」
「……あら。青の守護者達を知っているの? 烙人」
「青だけじゃなくて、黒、赤、白、みんな会ったけど。子供世代は青の奴らが初めてだな」
何故かそこで、ちらりと紅い少女を見る紫苑の男は、
「水華は赤の奴らと仲良かったんだろ。会いに行かないのか?」
「…………」
赤の守護者の姪とも言える紅い少女に、苦笑しつつ尋ねていた。
「エルフィが安全になって、猫を被り切れる余裕が持てればね」
淡々と答えた紅い少女に、今の方が普通猫だろと、呆れつつ返した紫苑の男だった。
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