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 柱時計から出て来た前回とは違い、今回の出口は、階は同じ何処かの客室にある洋服箪笥の開き戸だった。 「女物ばっかりだな。しかも子供服か?」 「部屋もメルヘンな感じだね。どんなヒトが使ってるのかな?」 「ヒトじゃなくて悪魔でしょ、普通に考えたら」  まだ二度目にも関わらず、すっかり慣れた様子で少年少女達は行動を始める。  回廊に続く扉を開けると、まず辺りの様子を一行は窺った。 「ここは……ユーオンが出てきた側とは、ちょうど逆ね」 「さすが猫羽ちゃん、だから今回はここなんだね」  目指す最上階に続く階段は南北にあり、北側の零時の部屋には先日の相手がいる可能性が高い。南の階段が間近の六時の部屋は、絶好の位置取りだった。 「それじゃ、俺は北に行けばいいな」 「気を付けてね、蒼。くれぐれも無理はしないで」  灰色猫をおんぶ紐で背に括りつつ、ひらひらと後ろ姿で手を振る剣士。不安げに赤い髪の娘が見送りつつ、帽子の少年と幼女を連れて南の階段に入る。 「――……あれ」  そこで不意に、幼女の直観は―― 「水、火……――」  本当は四元中継のもう一つの情報源から、思っていたよりも早く強い、その映像を受け取ることになった。 「――猫羽ちゃん?」  階段で突然立ち止まった幼女に、前後を囲む赤い髪の娘と、帽子の少年が不思議そうに足を止める。  そのアンテナを持ち歩く者の、戦闘開始の情報。  アンテナが元々付いていたPHSに届く光景が、PHSに宿らされた伝波系の悪魔から、主である幼女に届く。 「……君が私の相手をするの? 竜牙――水火」 「…………」  アンテナを始終持ち歩く紅い少女が、何処とも知れぬ川辺の一角で、腰の長剣を抜き放った黒い女と対峙していた。  そして自らの意思でアンテナに力を与え、情報を伝えんとしていることを幼女も感じ取った。 「やっぱり、水火……」  そのために昨夜、紅い少女は黒い女の居所を尋ねた。そのまま朝早くから剣を手に家を空けたことを確信する。  紅い少女は、力を使うための黒の魔法杖でなく、あえて白の片手剣。元は魔法杖だった武器を、製作者直々に片手剣へと造り直してもらった物を、静かに取り出していた。
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