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 無表情に剣を構えた紅い少女に、黒い女は楽しげにする。 「わざわざ剣で来るの? 力を使った方が有利なのに」 「……エルフィは、貴女を殺すことを望んでいないから」  「力」を使えばその結末は必然。無表情に紅い少女は黒い女と向き合う。 「貴女がエルフィ達に気を向ける余裕が無くなるくらい……わたしが貴女を痛めつければいいだけだもの」 「怖いね。剣でも殺す気で来るんでしょ、君は」 「貴女がエルフィに手を出すからよ。貴女の目的は、いったい何なの?」  そこで紅い少女は、あえてあるモードの人形となった。 「ばかラピの置き土産にしては、エルフィばかり狙ってない? もうあいついないんでしょ――エルフィがどう動こうが、あんたに関係なくない?」 「そうだねぇ。最終的にはシルファが決めることだしねぇ」  瑠璃色の髪の娘が戻ることを願う幼女の目的。それは別に、黒い女が無理に止める必要はない。既に娘の実母から解放されている黒い女も納得して頷く。 「でもエルちゃんで遊べば、こうして君が出て来てくれるでしょ」 「……やっぱり……要するにあたしを挑発してたってわけか、あんたは」  にこりと笑う黒い女に、敏い少女は嫌そうな顔付きをする。 「ばかラピの考えそうなことだわ。あんた今は、あいつを主人に見立てて、その空っぽな魂を動かしてるわけ?」 「そうだねぇ。私は元々、誰かを守るために存在する誰かだし……ラピスちゃんの唯一の心残りが、君――水華だったからね」  かつて、瑠璃色の髪の娘を「神」から解放するために失われた少女。それを再現する紅い人形に、黒い女は憐れむように微笑みかける。 「君は何者なのか、これから君がどうして行くか。ラピスちゃんは心配してたよ」 「……余計なお世話だし。あたしは、エルフィが望み通り生きていけるならそれでいいし」 「そうだろうね。君はあくまで誰かを糧に、誰かの望みを叶えるためにいる、何にでもなれる生粋の『魔』だから」  その黒い女が言う通り、現在失われた少女を再現する紅い人形は、女の望みを再現している。  「魔」として造られた躯体に宿った心霊は、純粋な「魔」。それを幼女も改めて悟る。 「でもさ。何になるかくらい――君が決めていいんじゃない?」 「……?」 「その答は……君はもう、知ってるはずなんだけど」  そして黒い女は、その先は剣で語らんとばかりに、紅い少女に容赦なく斬りかかった。
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