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 (からだ)の血は全く繋がっていないものの、現状把握に優れる同じ才能を持った少年と幼女は、本来は血も繋がった兄妹だった。 「……エルはどれくらい、ラピスのことは思い出せるんだ?」  自身の呑み物を温めるため、ちょうどお湯を沸かしていたらしい少年は、慣れない手つきでお茶を炒れながら幼女に手渡す。 「わたしとラピスは、あんまり似てないから……あの赤い夢と、躰が覚えてる痛みくらいだよ」  台所の机に向かって座る。ぬいぐるみを抱えながら空いた手でお茶を受け取り、幼女らしからぬ落ち着きで淡々と続ける。 「ラピスの体の記憶も、シルファが死んじゃった六歳までだし。もし読めたとしても、それくらいだと思う」 「そっか……だからエルは、子供になったのか」  あまりに言葉足らずの会話でも、少年と幼女の間ではそれで通じる。 「兄さんとレンも似てないから、レンのことはわからないでしょ」  こくりと少年が頷く。腕時計のように左手に巻く、蝶の羽飾りが付いた鍵を見つめて頷いていた。 「確かに、レンの体を使ってても、レンの記憶はわからないな」 「うん。わたしも、ラピスの体をもらったけど、ラピスのことはちょっとしかわからないよ」  互いにおかしなことを口にして頷き合う少年と幼女。実際その言葉の通り、どちらも自ら以外の他者の体を貰い受けて生を得た者で、遠い昔に己の体を失った実の兄妹だった。  ラピスという瑠璃色の髪の娘の体を、幼女は貰い受けた。元々は黒い髪で青い目の十三歳の少女だったが、気ままな死の天使(オセロット・アーク)と呼ばれたその体はもう遠い昔に亡くした。  ある古い国同士の戦いに巻き込まれ、敵対してしまった兄が重傷を負った時、助けるために敵国を訪れた結果命を落とした。それでも生前から竜珠という秘宝に魂が囚われていたため、秘宝の宿る遺物に己が残り続けたのだ。 「竜の眼って、命は助けても、記憶は戻せないのかな」 「そうだと思う……多分わたしは、生きてる頃から竜の珠の中にいたから、そっちに記憶が残ってたんだと思うよ」  兄はその妹を助けられるはずの小さな宝を持っていた。妹はそれが、人間である自らも使えるものと知らなかったので、兄を助けるために渡していた。  その宝を妹に返し、妹を助けるために、兄はヒトの命を貯める宝剣に魂を宿してまで長い時を待った。そしてつい先日、妹の魂が宿る秘宝と巡り合い、妹を助けることができていた。
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