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「やめだ、やめ。余所が気になってばっかりの奴と、真面目に闘うのは時間の無駄だ」 「……」  何が起きたのか、銀色の死神は明らかに集中力の低下を来たした。剣士の少年が肩を竦めて刀を仕舞う。 「……」  銀色の死神自身、何故その、見知らぬ相手の小さな悲鳴――城の何処かのトラップに引っかかったらしい誰かが気になるのかがわからず、不服げながらも剣を収める。 「……アンタ達は、これからどうするんだ」 「――?」  悲鳴のした方に向かうため、剣士に背を向けた死神は、最後にそれだけを静かに尋ねた。 「狐魄を……連れていくのか」 「さぁな? その辺りは俺にはさっぱりわからない」 「…………」  この後はただ、同伴者と合流する予定の剣士に、死神は暗く澱む赤い目を僅かに揺るがせる。 「……早く……仲間を連れて、ここから帰れ」  既に感じ取り始めていた末路。仔狐の昏い願いの行き先に小さく息をつき、その場を後にしていた。  ……終わったよ、と。  今もはらはらと、中継を続ける術師の子供に、不意にその終止符は告げられていた。 「……ソウが勝って……兄さんが、ツグミを探しにいったよ」 「――本当ですか!?」 「水火も頑張ったよ……なるべく時間、引き延ばしてくれた」  そのために誰か達が十分に話をできたこと。ただ、感謝する声で呟く。  PHSの小さな画面の中では、音声までは拾えないものの、紅い少女が座り込んでいる。それに代わるように、紫苑の髪と目をした男が、黒い女に両端に鎌がつく武器を突きつけていた。 「……いい年して、子供、苛めんな」 「失礼な。剣士相手に長物を取り出す鬼に言われたくないです」  元の他称は、戦う武器職人だった男。体の不調を押しつつ自らの武器を久々に取り出し、さすがに疲れが来ていた黒い女を、そのまま牽制し続ける。 「全く……烙人の助けが入るようじゃ、あたしもまだまだだわ」  くすりと、少し困ったような顔で、微笑んだ紅い少女だった。
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