3人が本棚に入れています
本棚に追加
どうして銀色の髪の少年が闘うのか、娘にはわからない。
何故瑠璃色の髪の友達が現れ逃げたのかも、何もわからない。
「これ以上……追いかけた方がいいのかも、わからない……」
どうすれば彼らの力になれるか、ただ、混乱していた。
「……一度、悠夜に相談してから、上に戻った方が良さそうね」
この城に来た転位の扉が現在地の近くにあるはずだ。その扉――ある客間の洋服箪笥を目指し、娘は部屋の一つに入った。
入ってきた時にも思ったことだが……その客間は非常に明るく、可愛く飾り立てられ、とても悪魔の城の一室とは思えなかった。
「えーっと……どの箪笥だっけ?」
クローゼットも全部で三つあり、蔦のような桃色のバラの花の飾りがあしらわれ、似たり寄ったりの様相をしている。
「これだっけ?」
まさかそのような所に、可愛いものが大好きでお洒落な部屋の主の、趣味の罠が仕掛けられているとは。まだ混乱が残る娘は、警戒することもできなかった。
両開きの扉を開けた瞬間、まるで扉から手が生えるように、引き込むような強風と黒い光が娘を捉えるように出現した。
「……え!?」
それと同時に、底抜けに明るい幼女のような声が場に響く。
「禁断の扉にようこそ! 此処こそはリリトちゃん屈指の秘境、無限の可能性を秘めたコスプレ王国なのです!」
「えええええ!?」
「イタイケで可愛いお嬢様、一名様ご案内~!」
嘘!? としか、叫ぶ間もなかった。何が何やらわからない内に、娘の意識は突然遠くなってしまい――
後には、ぱたんと扉を閉じたクローゼットが残るのみだった。
+++++
最初のコメントを投稿しよう!