余話

6/33
前へ
/165ページ
次へ
 金色の髪の少年に出会ったのは、約半年前だった。  その頃の娘は、瑠璃色の髪の友達と金色の髪の少年が、養子の兄妹であるということは全く知らなかった。 ――オレはどこかで……ツグミに会ったことがある気がする。  今思えば、現状把握に極めて優れた勘の良さを持つ少年が、そんなことを口にしたのは――瑠璃色の髪の友達という、同じ知り合いの存在を感じていたのかもしれないと、夢現に思い出していた。 ――オレはツグミと一緒の方がいい。  金色の髪の少年はそんな、真意のわかりにくいことを度々口にする。これまで娘は振り回されつつ、話半分に流すのが常だった。  その反面、滅多に喋ることのない銀色の髪の少年は、何かを話す時には実に率直だった。 ――殺さなくちゃいけない奴がいるんだ。  それでも率直なわりに言葉足らずで、結局理解に難渋する。 ――殺さないとあいつは連れていかれる。  それが誰のことだったのか……今の娘には少しわかる気がした。  謎のヒト喰いクローゼットに取り込まれ、意識を失っていた娘が目を覚ましたのは、それからわりとすぐのことだった。 「――あれぇ? もうお気が付きぃ? 謎のお嬢さん♪」 「……へ?」  真っ暗な部屋の中で、唯一寝台の灯りだけが妙に明るい。枕元に大量のバラの造花がまかれた広い寝台に、娘は横たえられていた。 「って……!?」  隣で寝転んで肘をつき、覗き込むようにしていた幼げな誰か。娘には見知った者だった。 「誰か全然わかんないけど可愛いーっ! 絶対あなた、可愛いヒト間違いなしだぁーっ!」  がばっと幼げな誰かが抱き着いてくる。娘がそれ以上言葉を口にするのを物理的に封じ込めていた。
/165ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加