余話

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「でもユーオンが求めるものはきっと、貴女達の所にある……ラピスと同じように」 「……え?」  それをつい先刻、少年が残した言葉から女性は悟っていた。 「あまりいつまでも待たせるようなら、怒ってあげて。きっと……それが一番、あのコに届くから」 「……――……」  わけがわからず黙り込む娘に、それだけを言い残す。  そして少年と同じように、振り返らずに去っていった女性だった。  そうして、女性と少年が共に降りて行った階段に、娘はしばらく立ち尽くすしかできなかった。  この階段を駆け下りた数刻前の焦燥を、苦い気持ちで思い出した。 ――ここで見失ったら、もう――……会えない気がする……。 「……そんなことない。狐魄……ラピだってきっと、帰ってくる」  己に言い聞かせるように呟きながら、最上階への歩みを再開した。 「確かに二人共……意地っ張りなところとか、そっくりだもの」  その友人も少年も、自ら助けを求めることはほとんどない。  それが何処か歯がゆかった娘は、吹っ切れたように笑った。 「迷子なら、誰かが――手をひいてあげなきゃね」  そして娘は最上階で、仲間達に保護された友達と再会する。
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