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「あれは……青の守護者の姪だろ、確か」  紫苑の男は、世界中を渡り歩いた化け物だ。この世界に隠れ潜む、ある「宝」の守り手――正式には「守護者」と呼ばれている、人間ならぬ強大な「力」を持つ者達について、様々な情報を一通り把握していた。 「危ないことはないだろうが、多分逆に警戒されるぞ」  視線の先には、古道具屋に立ち寄っている赤い髪の娘がいる。一般的な着物の姿で、年若い娘の気配を探り、男が難しい顔をする。 「水火が『魔』だってすぐにバレるはずだ。相当強い『力』と霊感の持ち主だぞ、あの子」  現在紅い少女を動かすのは人間の幼女の魂だ。それでも強い魔族を基に造られた紅い少女自体の不穏さは隠せない。 「うん。だから、水火も友達になれると思う」  至って気楽に、紅い少女の操り主は淡々と所感を口にする。  あまりに無害な発想に、男が一度だけ大きく息をつく。了解、というように無表情にゆっくり頷いた。 「オレもちょうど、この近くにいるはずの奴に用があるから、終わったら来てくれ。先にある程度、買い物も済ませておく」 「わかった。ラクトも倒れないように、気をつけてね」  全く無機質な表情で男を見て言う少女に、男は困ったように笑ってもう一度溜息をつく。紅い少女をその場に残し、いくつもの商店が連なる賑やかな界隈へと姿を消していった。  ――で、と。買い物籠を腕に掛けて持ち直した紅い少女は、ふふ、と微笑みながら、必要事項を独り言で確認する。 「お話するのは、わたしにしろと言うのね? エルフィ」  男が行ってから、灰色猫はすぐに人形の手綱を放した。それを籠の内に収め、紅い少女が古道具屋へ向かう。  紅い少女とかなり年が近く、肩にぎりぎりつく長さの真直ぐな赤い髪の、着物の娘が見ていた店にゆっくり近付いていった。
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