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 気配を追って辿り着いた川辺で、紅い少女はやっと紫苑の男を見つけた。少女と共に、腕の中の灰色猫は、静かに驚くこととなった。 「……あれれぇ? 誰かなぁ、あの女のヒトと男のコは」  にこやかに遠目で、紅い少女が男と知らない者達の姿を確認している。何故か瑠璃色の髪の娘モードへ切り替えている。  その選択の意味は、紅い少女が相手の一人については、素性に気が付いていることを示していた。 「あの男のコは確か、ラピがPHSの待受にしてたコだけどなぁ。何か凄く、アヤシイおねーさんと一緒にいるね、ねぇエルフィ?」  紫苑の男が険しい顔付きで、話をしている二人の相手。  一人は紅い少女と年恰好が近く、白金の髪と紅の目を深型の帽子で控え目にした少年。襟のある上着と繊維の荒い長い下衣という、この国らしからぬ服装で人の好さそうな笑顔――それでいて、端整に整った顔立ちの者。  もう一人は全体的に黒のシルエットで、長く真直ぐな黒髪を高い位置で一つに括る女だ。縦襟の黒の繋ぎ服で、広がる下衣を腰に下げた長剣のベルトで引き締めている。空のような青い目で、営業スマイルの大人の女だった。  紅い少女が辿り着いたと気付いた紫苑の男が、少しバツの悪そうな顔をしながら少女を手招きする。 「あれ? 烙人さん、知り合いですか?」  男と楽しげに話していた帽子の少年は、近付いてくる紅い少女に気付き、不思議そうに眺めていた。  少年の隣に立つ黒い女が、むすっとしている男に代わって楽しげに答える。 「あのコは烙人君が造った娘ですよ、(くぬぎ)君」 「ええ! 烙人さん子供いたんですか⁉」 「……誰がだ。適当なこと言うな、あんたも」  一斉に三人の視線を受けることになった紅い少女は、にこにこ明るく微笑みながら、灰色猫に話しかけつつ現場に向かう。 「今日は何だか、色々運命的な出会いがあるねぇ、エルフィ」  そんなことを口にする少女は、灰色猫に宿る魂が、現在の状況に密かに動揺している気配は気付いているようだった。  それは実際――その帽子の少年と、瑠璃色の髪の娘の縁。  更には黒い女との縁を、灰色猫が直観したからだった。
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