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「そうですよねー。でないと烙人さんが成人前の子供になるし、今まで放っておき過ぎですよねー。烙人さんの不健康ぶりだと無理もなくても、それにしたってヒドイですよね」 「わかってるなら薬よこしやがれ、槶。オマエならこの場で、すぐに調剤することだってできるだろ」  恐喝するかのように大人げない男に、帽子の少年が、ダメです! と男を見返している。 「烙人さんの注文通りはホントに危ないお薬になっちゃいます! 僕まで危ない売人さんになっちゃいます! もう少し研究して体に良い物にしないと、とてもじゃないけど渡せないです!」 「ったく……槶はお節介なんだよ、ガキのくせに」 「その辺り適当過ぎるから、烙人さんは不健康なんです。もう少し体を大事にして下さい!」  年中無休の体調不良の男が、この国に来た時には頼りにする若き薬剤師。意外な顔を持つ帽子の少年は、ガキ呼ばわりする男より余程大人びた不満げな顔で男を見上げていた。  そんな帽子の少年の横で、けらけらと黒い女が笑う。 「文句があるなら、自分でお薬造ればいいのにね、烙人君も。元々はそうしてたんじゃないの?」  物造り系何でも屋である男は、そもそも少年に頼んだ処方箋も、基本構成は自身で開発した薬剤だった。 「んな余裕あれば誰が頼むか。薬なんて本来専門じゃないし、本気でそろそろ死にかけなんだオレは」 「そうみたいだね、残念だねぇ。探し人もまだ捕まえられないままなのにねぇ」 「……」  じろりと黒い女を睨む男は、とても複雑そうな顔をしている。黒い女も不敵な微笑みで男を見つめ返し、大人同士がしばらく無言で対峙している。  場に到着した紅い少女は、帽子の少年に朗らかに声をかけた。 「こんにちは、初めまして~。アナタ、烙人の知り合い?」  にこにこと明るく尋ねる少女に、帽子の少年もうん、と明るく頷く。 「私は竜牙(たつき)水火って言うんだぁ。最近引っ越してきたんだけど、京都っていい所だねー」 「タツキさん? へー、ジパングの人っぽくないけど、何だかカッコいい名前だねー」  完全に当て字である姓を名乗る少女は、でしょー、と嬉しげに、軽い調子で話を続ける。
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