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「じゃあひょっとして、竜牙さんがラピちゃんの妹さん?」 「――え?」 「――あ?」  ポカンとした紅い少女の隣、黙って成り行きを見ていた男まで唖然とする程、帽子の少年の台詞は唐突だった。 「ラピちゃんこないだ、今度から妹さんがジパングに住むって言ってたんだ。でも竜牙さん、名字も違うし、やっぱり違う?」 「……え?」 「……な?」  顔を見合わせる男と少女は、それもそのはず……。 「それって……いつのこと? 槶君」 「ほんとについこないだ。まだ一週間たってないけどなぁ」  帽子の少年が言う頃には既に、瑠璃色の髪の娘は灰色猫の幼女に体を譲り、消えてしまっている。それなのに娘と、少年は話をしたという。  不可解過ぎる事態に黙り込んでしまった少女と男に、帽子の少年は不思議そうに自然に笑った。 「ラピちゃん、お母さんの所に行くって言ってたし、今はもうジパングにはいないんだよね?」 「……お母さんの所?」  紅い少女はぴくりと眉を顰め、無表情のまま少年を見返す。 「アナタには――ラピはそう言ったんだ?」 「うん。あれ? 竜牙さんには違うの?」  当初口にした漢字名でなく、瑠璃色の髪の娘の愛称を言った少女に、帽子の少年は微笑んだまま首を傾げた。 「…………」  紅い少女は一しきり、無表情にまた考え込んだ。 「私はラピの妹じゃなくて、ラピの妹を預かってるんだぁ」  にこりと明るく微笑むと、少女側の事情を、躊躇無くそこで口にした。 「ラピも、ラピのお兄ちゃんもお父さんも留守にしてるから、ちっちゃなエルフィを守ってねって頼まれてるのー」 「そーだったんだ! うわー、大変だねぇ、竜牙さんも」 「でしょー? いくら私が、ラピの義理の叔母さんだからって、ユーオンもレイアスもヒドイよねぇ」  そーなの⁉ と驚く帽子の少年に、えへへと少女は明るく笑った。 「そういやユーオン君もいないってラピちゃん言ってたなぁ。でもそれじゃ、今お家には女の子しかいないんじゃないの? 大丈夫、危なくないかなぁ?」 「うーん、だから烙人がいてくれてるんだけど、烙人もあんまり体調良くないからなぁ。やっぱり少し無用心だよねー、危ないよねぇ?」  オイオイ、と紫苑の男が呆れる。強大な魔の血をひき、強い魔法剣士である紅い少女の、か弱いぶりっこ。構わず紅い少女は、帽子の少年との会話をそのまま楽しんで続ける。
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