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「でも、ラピの知り合いに会えて良かったなぁ。京都ではまだ全然、頼れるヒトがいなくて困ってたのー」 「そっか、そうだよね。竜牙さんも引っ越してきたばかりって、さっき言ってたよね」  それなら、と帽子の少年は人の好い顔で紅い少女の手をとり、朗らかに笑った。 「良かったら今度、他の友達にも竜牙さんのこと紹介するよ。みんなラピちゃんのことも知ってるから、ラピちゃんの妹さんも一緒に連れておいでよ」 「本当? 嬉しいなぁ、槶君って優しいねー」  淑やかでもきらきらとした目で帽子の少年を見つめる少女に、あはは、と照れ臭そうにする。 「明日はちょっと用事があるから、明後日の朝にまた、ここに来てもらっていい? みんながいる所に案内するからさ」 「うん、わかった。よろしくお願いするね、槶君」  そうして帽子の少年と少女の話が一段落したところで、話の邪魔をしないように黙っていた黒い女が視線を向けた。 「そろそろいいですか? 槶君」 「あ、ごめんねスカイさん。まだ京都案内の途中だったよね」 「すみませんねぇ。休暇中とはいえ、営業職にはどうしても、次の仕事の足場固めが必要なもので」  それじゃ、と黒い女は、紫苑の男にひらひら手を振って背を向けた。 「さわらぬ神にたたりなしですよ――烙人君も、水火さんも」  帽子の少年とは顔見知りで、たまに手伝いを頼んでいるらしい。毒も害も無い仕事らしき活動のため、夕刻前の川辺を後にした女達だった。  帽子の少年と黒い女が去った後で、紅い少女は改めて――  まだ不服且つ複雑そうに黙る紫苑の男を、虚ろな微笑みで見つめる。 「あのヒトは誰だったのかしら? 烙人」 「……」 「何だか烙人とは親しげに見えたけど……わたしの気のせい?」  ――けっ、と。少女を見ずに川辺に背を向け、歩き出した男に続く。 「オレのヨメ……によく似た、名前までほぼ同じっつー意味のわからない、多分人間の妙な女だよ」  さらりと男は、顔見知りではあった黒い女を思い浮かべ、不満そうに大胆な事情を口にした。
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