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 赤い夢とそうして、直接向き合った効果だろうか。  その日の夜は、夜行性である瑠璃色の髪の幼女も早くに、温かな眠りにつくことができていた。 ――ごめんね……私、邪魔かな?  まだ幼女が、物言わぬ赤い天使であった頃に。  瑠璃色の髪の娘と共に過ごした束の間……哀しくも優しい記憶が、深い青の夢として初めて訪れる。  その瑠璃色の髪の娘。金色の髪の少年の義理の妹分は、実の妹よりも兄に似ていた。 ――あなた、ユーオンの妹さんなんだよね?  常に自責的で寄る辺なき心。だから少年と娘は、互いに寄る辺を見出した悲哀。 ――ユーオンは、あなただけを守れば良かったのに……。  一度は破綻を来した少年が、何に苦しんでいたのか。娘は自身に宿る「神」から記憶をいじられながら、それでも誤魔化さずに直視していた。生きるために奪い続けた生の果てを探していた。 ――私がいたことに、一つでいいから……意味があればいいのに。  そうして大切な体をくれた娘を、赤い天使が慕わないわけがなかった。  金色の髪の少年も瑠璃色の髪の娘も、彼ら自身を呪われた者と見なし、心から嫌悪していた。  そんな彼らをこそ幼女は心から慕い、今も求め続けている。  寝付きも夢見も良かった夜の翌朝は、寝起きも良かった。とにかく朝が弱い幼女も、珍しく自分で起きられる程の快調ぶりだった。 「本当、びっくりね。エルフィってばそこまでして、槶君達に会いたかったんだ」  川辺で朝に待っていてと言った、帽子の少年に無事に会うために。  紅い少女に付添われて、川辺の堤防に座りながら眠たい目をこすっていると、異例の頑張りに少女がくすりと笑っている。 「忘れ物よ。元々はわたしのだけどね」 「……ありがと、水火」  黒く長いリボンを取り出し、下ろしたままだった子供の髪を、束ねてくれた紅い少女だった。  程無くして、約束の相手――帽子の少年が近くの橋に現れていた。 「おはよー、竜牙さーん! 今日もいい天気だねー!」  朝から元気一杯である帽子の少年は、ぶんぶんと橋の上から手を振り、堤防まで駆け下りてくる。 「ごめん、結構待った?」 「ううん、そんなことないわ。おはよう、猪狩君」  え。と帽子の少年は、淑やかに微笑みながら立ち上がった紅い少女に、何か違和感を覚えたようだった。
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